研究課題/領域番号 |
08230223
|
研究種目 |
重点領域研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
波田 雅彦 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20228480)
|
研究期間 (年度) |
1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1996年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
|
キーワード | 金属クラスター / 励起状態 / SAC / SAC-CI法 / 分子軌道法 / 光解離反応 / 金属錯体 / π電子系クラスター / 反応経路解析 |
研究概要 |
本年度は主として次の二つのテーマで研究した. (1)鉄カルボニル錯体の光解離反応とSi-H結合への挿入反応 我々は以前の研究によって、鉄カルボニル錯体Fe(CO)_5の光吸収スペクトルをSAC-CI法によって定量的に再現し、スペクトルのピークが全て許容遷移であるA2"もしくはE'にアサインできることを示した。本年度は光照射によるCOの脱離、およびそれによって発生したFe(CO)_4がSi-H結合へ挿入する反応を研究した。許容のE'状態に励起したFe(CO)_5はヤーンテラー変形し、反発的なポテンシャルに沿ってエカトリアル位のCOが自発的に脱離する。COが脱離したFe(CO)_4は一重項励起状態B1であるが、最低一重項状態A1とのエネルギー差はわずかであるため、最低一重項状態へ速やかに緩和すると考えられる。解離極限では三重項励起状態が基底状態となる。最低一重項状態にあるFe(CO)_4はSiH_4のSi-H結合へエネルギー障壁なしに挿入し、酸化的付加的Fe(CO)_4+SiH_4→Fe(CO)_4(SiH_3)Hが容易に起こりえる。一重項励起状態B1や三重項基底状態ではこの反応には高いエネルギー障壁が伴っていた。この結果は、光照射に伴う発生期のFe(CO)_4のみ反応性を持つことを報告した実験事実と対応している。 (2)ベンゼン-バナジウム錯体の電子状態 V (benzene)_2錯体は18電子則を満たす安定なCr (benzene)_2錯体より1電子少ない系であるゆえに高い電子親和力が期待されるにもかかわらず、V (benzene)_2錯体の電子親和力は負であると報告されている。この結果に対して、理論的な説明を試みた。V (benzene)_2錯体の基底状態と励起状態およびアニオン状態のエネルギーレベルをSAC-CI法によって定量的に決定した。その結果、d軌道の電子占有状態の異なる2つの電子状態が極めて近接して存在すること、アニオン化状態のエネルギーはそれらの中性状態よりさらに上方に存在することを示した。これらの結果は実験事実とよく対応している。アニオン化状態が不安定である理由は、現在のところ、ベンゼン方向のd電子とベンゼンのπ電子のクーロン反発が大きいためと考えられる。
|