研究概要 |
分子を高度に組織化する方法としてラングミュアーブロジェット(LB)法が注目されている。本重点研究では高分子化合物を用いて,高秩序、高配向性の高分子組織体の創成を目指して、高分子LB膜の構築とその構造解析を行い,組織体の性質を制御する因子について、分子レベルで検討して行くことを目的としている。昨年までは長鎖アルキルアクリルアミド系LB膜の秩序構造について、分光学的に詳細に検討してきた。本年度の研究では、フッ素系高分子組織体を創成することを目的として、アクリルアミド化学構造を基本骨格として種々の鎖長からなるN-フッ化アルキルアクリルアミドポリマーを合成し、フッ素LB膜の構築とその機能化について検討を行った。 鎖長の異なるフッ化アルキルアクリルアミドモノマーを合成し、ラジカル重合によりフッ化アルキルアクリルアミドポリマーを調製した。これらのポリマーの表面圧(p)-面積(A)等温線測定からそれらの水面上単分子膜挙動が検討された。フッ化アルキルアクリルアミドポリマーのp-A等温線を示す。最適なフッ化アルキル鎖長数は炭素数8であり、崩壊圧は51mN/mとなった。この単分子膜は固体基板上に累積でき、フッ素系高分子LB膜を得ることが出来た。このLB膜のの表面特性について、ガラス基板上に累積したポリマーLB膜表面の水の接触角側定を行った。3層以上累積すると接触角は一定の値となり,接触角110°の撥水性の表面が形成されていることがわかった。また、種々の有機溶媒に対する接触角の測定から、フッ素系高分子LB膜の臨界表面張力を決定し、9mN/mの値を得た。また、このフッ素系ポリマーLB膜の動摩擦係数は一層累積しただけで0.15と小さな値を示した。
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