研究概要 |
酵素などの機能性タンパク質は,互いに異なる機能を司る複数のドメインが組織化したものであり,各機能ドメイン間の分離が可能と考えられる.本研究では,アルカリ性条件下において高活性を示す好アルカリ性バシラス属細菌41M-1株に由来するキシラナーゼを例にとり,その触媒機構やアルカリ性への適応機構を分子レベルで明らかにすることを目的として,機能ドメイン分離を試みた. (1)キシラナーゼ遺伝子のクローニングと解析 41M-1株染色体よりキシラナーゼ遺伝子をクローニングし,塩基配列決定を行った.本遺伝子には27アミノ酸のリーダー配列と327アミノ酸の成熟型酵素がコードされていた.他のキシラナーゼとのアミノ酸配列比較から,本酵素のN末端側2/3の領域は触媒ドメインと考えられた.その下流には,リンカー配列を介して,約100アミノ酸の機能未知領域がC末端側に伸びていた. (2)触媒活性に関与するアミノ酸残基の特定 部位特異的変異により触媒ドメインにアミノ酸置換を導入した各種変異型酵素を調製し,野生型酵素との活性比較を行った.その結果,本酵素においては2つのGlu残基が触媒残基として機能していることが推察された.また,いくつかのTrpおよびTyr残基の活性への関与も示された. (3)C末端機能未知領域の解析 部位特異的変異の手法を用い,本酵素のC末端側に存在するポリペプチド領域の欠失を行った.C末端欠失型酵素および野生型酵素の性質比較から,C末端領域は本酵素の触媒活性発現に必須ではなく,多糖への結合に関与していることが示唆された.
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