研究概要 |
α-ヘリックスを形成するペプチド分子を素構造に選び、ペプチド分子が規則正しく配向した単分子膜の調製を試みた。(1)二塩化ジシスタミンをω-アミノカプロン酸で延長した長鎖シスチン化合物で、金表面上にSAMを形成し、クラウンエーテルをC末端に結合した疎水性ヘリックスペプチド(BA16Cr)を付着させた。SPR測定より、膜厚はペプチド分子がヘリックス構造をとっている場合にはほぼ相当する29Åであった。これに対して、クラウンエーテルをもたないBA16Bを、金表面上のSAMに付着させたところ、その膜厚は10Åであった。これらのペプチド薄膜のIR-RAS測定を行ったところ、BA16Crは基板に対して垂直に近い配向をとっているのに対し、BA16Bは金表面上に横たわっていた。したがって、金表面のアンモニウム基とペプチド分子のクラウンエーテル部位との分子認識を用いることにより、ヘリックスペプチド分子の配向を金表面に対して垂直に近い状態にして、ペプチド超薄膜を構築できることが示された。このペプチド膜では、マクロダイポールモーメントが平行型で配列していると考えられることから、非線形二次効果が現れると期待される。(2)末端に2,6-ジアミノトリアジン基を結合したヘリックス形成ペプチド(BL16T)を気/液界面に展開して単分子膜を調製したところ、ヘリックス軸は界面に垂直に配向していることが示唆された。この単分子膜はウラゾールと水素結合を介した相互作用の起こることが示された。したがって、2,6-ジアミノトリアジン基とウラゾール基との分子間水素結合を利用して、配向したペプチド超薄膜を形成できると予想される。
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