研究概要 |
本研究では脂質2分子膜小胞(リポソーム)と細胞との共存時に膜タンパク質が細胞膜からリポソーム構成脂質からなる膜小胞上に移行する現象を利用した,可溶化の過程を含まない新規な膜タンパク質再構成方法開発の可能性を探っている. (1)移行膜タンパク質を保持したリポソームと膜タンパク質を含まないリポソームとを固定相・移動相として用い,膜タンパク質の種類に依存した両リポソーム間における移行挙動の違いを利用したクロマトグラフィー系を構築する試みとして,まず長鎖アルキル基で化学修飾した高分子ゲル上に固定したリポソームと固定していないリポソームとから構成される系を構築し,この系においてリポソームから別のリポソームへとヒト赤血球膜タンパク質であるアセチルコリシエステラーゼが移行することを示した.さらにリポソーム脂質組成,ゲル疎水基構造などの条件が再移行に与える影響についても検討をおこなった. (2)いったんリポソーム上に再構成した機能性膜タンパク質を本来その膜タンパク質を持たない他の細胞膜に導入する試みの第1段階として,F9細胞膜上に存在する細胞-細胞間接着膜タンパク質E-カドヘリンのリポソームへの再構成を検討した.F9細胞からの移行膜タンパク質量はリポソーム構成脂質中の人工リン脂質1,2-ジミリスタミド-1,2-デオキシホスファチジルコリンの含量増加とともに多くなった.移行タンパク質のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動,さらに抗E-カドヘリンモノクローナル抗体を用いたECL-western blotting法によりE-カドヘリンを検出し,E-カドヘリンのリポソームへの導入を示した.次に,このリポソーム上に再構成したE-カドヘリンの機能に関して検討をおこない,リポソーム上のカドヘリンがF9細胞上のカドヘリンと相互作用可能であることを示唆する結果を得た.
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