研究概要 |
1.本研究では、最近当研究室で見いだした基質である硫酸イオンの脱着に対応してダイナミックに形を変える酵素系におけるInduced fitの基本的なモデルとして位置づけられる国内外において類例を見ない知見(Inorg.Chem.,1994)を起点として、糖質をN-グリコシド(窒素配糖体)として金属上に集積させた配糖錯体のX線結晶構造解析により得られる詳細な立体化学的情報に基づいて糖質を機能素子とする分子識別能を有する超構造配糖錯体を設計し、基質特異的化学変換を促進する酵素類似機能を有する新しい化学反応場の構築を目的としている。 2.本年度はアミンとして分枝状のテトラミンであるトリス(2-アミノエチル)アミン;trenを用いることによりマンノース型の糖(D-mannose(D-Man),L-rhamnose(L-Rha))部分を強制的に接近させてCage Complexのように金属まわりを取り囲んだ超構造錯体の分子設計を目指して、一連のCo(II)配糖錯体:[Co((D-Man)-tren)]Xn,[Co((L-Rha)-tren)]Xn(X=Cl^-,Br^-,SO_4^<2->)の合成を行い、それらの立体構造をX線結晶構造解析により解明するとともに、配糖錯体の溶液内挙動を詳細に検討した。 3.対イオンの種類の違いで錯イオン自身の構造変換が誘起されるという、酵素系におけるinduced fitの最も基本的なモデルともみなしうる分子識別能に関連した興味深い現象を見い出した。今後糖質ならびに金属種の選択により新機能の開発を目指したい。
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