研究概要 |
本年度の達成すべき具体的な課題は以下の通りである。抗体を(1)H鎖,L鎖に分離する。(2)各鎖の抗原に対する親和性定数を求める。(3)各抗体産生遺伝子の抗原認識部分の塩基配列およびアミノ酸配列を決定し、その立体構造を解析する。(4)親和性の高い鎖について超可変領域付近のペプチド合成及び遺伝子クローニングを行う。(5)このペプチドについて抗原との免疫学的親和性定数を決定する。 受け皿分子Aとなる抗gp41抗体および受け皿分子Bとなる抗ヘミン抗体をマウス腹水より採取・精製後、H鎖,L鎖に分離しELISAにより見かけの親和定数を測定したところ、認識の主体は前者ではL鎖、後者では、H鎖にあることが判明した。次に、抗体可変領域遺伝子配列の決定、その推定アミノ酸からの3次元立体構造予測を行ったところ、抗gp41抗体L鎖は興味ある配列を示し、L鎖CDR-1にはfull sequenceのアミノ酸が挿入されていた。また、抗gp41抗体L鎖は表面にかなり突出していた。抗ヘミン抗体の場合、H鎖CDR-1および-2が作り出す空間が抗原認識に関与していると予想された。そこで、抗gp41抗体L鎖のCDR-1ペプチド(16mer),抗ヘミン抗体H鎖のCDR-1(5mer),CDR-2(17mer),CDR-3(8mer)を全て固相法で合成した。そして、ELISA、蛍光消光法およびCDスペクトルなどから抗gp41抗体L鎖のCDR-1ペプチドはgp41の保存領域抗原と強く相互作用をし、抗ヘミン抗体H鎖のCDR-2の抗原親和性は6.8x107/Mとなり、完全抗体よりも強いと云う驚く結果となった。以上、本年度の研究により、所期の目的である第1世代までの分子設計を行うことが出来た。来年度からいよいよ本格的な機能性超分子の設計・作製に入れる段階に達した。
|