研究概要 |
本研究は,固液界面での触媒反応過程を時間分解赤外分光を用いてリアルタイムに追跡し,反応メカニズムを分子レベルで理解することを目的にしたものである。本年度は以下の電気化学反応系の検討を行った。 1.固液界面構造変化のダイナミクス:反応を制御するために電極電位を変化させた時におこる界面構造の変化は反応を理解するうえで重要である。マイクロ秒の時間分解分光測定により,水分子が瞬時にその配向を変化させる様子,支持電解質アニオンや有機分子の競争吸着,時間による吸着構造変化,などを始めて捉えることができた。また,吸着分子・イオンの配向を詳細に検討し,電気化学的手法を用いて得られる熱力学的・速度論的情報を分子レベルで説明した。 2.ぎ酸の電解触媒酸化機構:メタノールやぎ酸を燃料とする燃料電池の酸化反応で,COによる被毒過程は良く知られているが,主反応プロセスは未解決である。そこで,COによる被毒の影響を受けない金を電極として,ぎ酸の酸化過程を検討した。従来COH種などの中間状態を経て酸化されると考えられてきたが,こうした化学種は観測されず,電極表面への吸着を経て直接酸化されることを明らかにした。現在,表面修飾による触媒活性向上の機構を検討している。 3.二次元相関解析法の改良:時間による各バンドの強度変化の違いにより,多数の吸収バンドを化学種毎にグループ分けし,反応過程の詳細な検討を可能にするのが二次元相関解析である。反応の時間系がより明確になるようにプログラムを改良し,上記1,2の他にもいくつかの反応系の解析に利用し,その有効性を明らかにした。
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