研究概要 |
最近,ゼオライト中のMoS_2クラスターは有望な脱硫触媒として注目されている.一方,ゼオライト空隙中に配列させた半導体MoS_2クラスターが示す量子サイズ効果も興味深い. しかし,これまでゼオライトFAU中のMoS_2クラスターの研究報告は,MoS_2クラスターがゼオライト結晶外表面に凝集していたり,あるいはそれを作る過程でゼオライトFAUの骨格が壊されている事を示唆する例が大部分である. 今回は高分解能電子顕微鏡像で良質の結晶であることを確認したNa-FAU (Si/Al=2.8)を用いた.阪大・基礎工岡本康昭博士により,Na-FAU粉末にMo(CO)_6を気相で吸着させ,引き続き導入したH_2とH_2Sの混合ガスと反応させてMoS_2クラスター(MoS_2/FAU)を作製した. この試料を電子回折図形,高分解能電子顕微鏡像,X線粉末回折図形で解析した結果, (1)この処理によりFAU骨格は壊されず,クラスターは結晶外表面に凝集していない, (2)クラスターはスーパーケージ中に形成され,クラスター間に僅かの違いが見られる, (3)MoおよびS原子は平均としてT_d対称を保ってスーパーケージを形成する四員環からなるベルトに近接した位置に統計的に分布する, ことが判明した.具体的なクラスターの構造モデルの解明は今後の課題である.
|