研究概要 |
高耐熱性のアルミナ多孔体を作製する目的で2流体ノズル方式の噴霧熱分解装置を用いて様々なアルミニウム塩水溶液を噴霧熱分解し,中空球状のアルミナ粉体を調製した.検討した調製条件は;噴霧溶液:塩化アルミニウム,硝酸アルミニウム,硫酸アルミニウム,アンモニウム明礬,蓚酸アルミニウムの水溶液,市販のγアルミナを分散したスラリー,噴霧溶液濃度:0.20mol/l,溶液流量:16ml/min,気体流量:21.4〜59l/min,噴霧温度:900℃.得られた粉体はいずれも中空球状で,塩化物と蓚酸塩では数μm,硝酸塩と硫酸塩では10μm程度の大きさであった.球殻の厚さは蓚酸塩が最も厚く,硝酸塩が最も薄かった.粉体の比表面積(BET)は数〜114m^2/gで,塩化物を噴霧した試料で最も大きくなった. 噴霧熱分解した粉体を一軸プレスして成形体とし,これを1000〜1700℃に熱処理し,焼成体の比表面積と細孔径分布を水銀圧入法及びBET法により測定した.その結果,1500℃熱処理後の比表面積は塩化物試料で最も高く,約10m^2/gであった.この高い耐熱性は作製した中空粒子の充填状態によっても変化し,充填率が高くなるよう粒径に適度な分布をもたせた粉体の方が耐熱性が高くなることが明らかとなった.また,細孔径の大きさと中空粒子の大きさの関係から,試料中にできている細孔は中空粒子の殻を形成している一次粒子の粒子間隙に対応し,その大きさが小さいほど比表面積が大きくなる関係を示すことが分かった.これらの細孔は熱処理により徐々に大きくなったが,作製時に小さな細孔ができている試料ほど熱処理後の比表面積は大きかった.これらの結果から,多孔体の耐熱性を向上させるためには噴霧粉体にできる細孔を小さくすることが重要であることが明らかとなった.
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