研究概要 |
1.「ニッケルアセチルアセトナート分解法」による触媒の調製 不斉修飾担持ニッケル触媒を調整する方法として,ニッケルアセチルアセトナートと担体を混合し無溶媒で熱分解後,光学活性物質で修飾する方法を確立した.この方法により酒石酸修飾担持ニッケル触媒を調製し,アセト酢酸メチルのエナンチオ面区別水素化を行った.担体としてα-Al_2O_3,γ-Al_2O_3,SiO_2,H-ZSM-5,ZrO_2などについて検討した結果,α-Al_2O_3H-ZSM-5を担体として用い修飾液中にNaBrを加えたときに80%以上の光学収率が得られた.α-Al_2O_3を担体に用いた場合,水素気流中での触媒焼成温度のニッケル結晶子径及び光学収率に与える影響を検討した結果,水素処理温度が高いほど結晶子径が増大し,また光学収率も上昇することが明かとなった.ニッケル粒子の大きいものではNi(111)面が大きく表面に現れるが,小さいものでは配位不飽和な特定原子,例えばNi粒子の陵または角にあるNi原子が表面に現れていることを考慮すると,Ni(111)面が立体区別に適した面であると推測される. 2.ゼオライト担持修飾ニッケル触媒 H-ZSM-5を担体に用いると,光学収率は82%と高い値を示した.ニッケルアセチルアセトナートが分解してできたNiはH-ZSM-5の細孔内に入り吸着するものと,H-ZSM-5の表面である程度の大きさのNi結晶に成長するものがあると考えられる.酒石酸は分子の大きさからH-ZSM-5の細孔内には入れず,表面上のNi結晶上に吸着し,このとき,水素はH-ZSM-5の細孔内に吸着したNiで効率的に活性化され酒石酸の所まで移動すると考えられる.このことは,細孔内のみにPtなど水素をより活性化させやすい金属を析出させ,その後修飾担持触媒を調製することにより,水素の高度の活性化をゼオライトの細孔内で行い,立体区別水素化をゼオライトの表面のNi原子上で行う触媒の調製が可能であることを示唆している.
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