研究概要 |
資源配分問題を解くマルチエージェントシステムの集団行動を記述する離散時間型計算生態学モデルを用いて,システムの安定条件と分岐現象の発生を明らかにした.システムの性能を改善するためにリワード機構を導入したHogg-Huberman戦略の性質を検討した.ここでは,ネットバイアスに基づく戦略を考えた.このとき,不動点は2種類のタイプに分けられることを示した,ひとつは,リソースからの利益が等しくならない不動点のタイプで,これは,リワード機構を導入しないときのみに存在する.もう一つの不動点のタイプは,利益が等しくなる不動点で,リワード機構を導入することにより現れる.さらに,このタイプの不動点は,戦略数が2個の場合には,孤立した不動点として1個だけ存在するが,戦略数が3個以上の時には,非孤立した不動点として,無数存在する.このとき,初期値に依存して収束する不動点は異なるが,利益は等しくなることをシミュレーションにより確かめた.次に,ネットバイアスの取る範囲と不動点の安定性について検討した.戦略数に関係なく,範囲が十分に広いときは後者のタイプの不動点が安定となり,範囲が広い程安定度がよくなることを示した.範囲が狭くなると,カオス的遷移が観測され,かなり長時間にわたってカオス的挙動をした後に,不動点に収束するようになった.さらに,狭くすると不動点がサブクリティカルホップ分岐を起こして,不安定化し,カオス状態へと遷移した.最後に,戦略の範囲を固定し,戦略数を変化させたときの平均収束回数を調べた.
|