研究課題/領域番号 |
08235208
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河内 啓二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (60143400)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1997
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1996年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 昆虫 / 飛行力学 / トンボ / はばたき運動 / 制御 |
研究概要 |
昆虫の翅の断面形状をモデル化し、昆虫の飛行状態におけるレイノルズ数を模擬した水槽実験を行い、2次元の翼型特性を計測した。その結果、翼の断面はこのレイノルズ数の領域では、薄ければ薄い程性能が良く、また種々の翼型の中では中央に反りのついた翼の性能が最も優れていることを見出した。一方、高速度カメラとレーザシートを組み合わせて用いることによって、実際のトンボの翼の断面形状の時間変化を精密に測定する方法を考案し、得られた画像から、実際のトンボでも反りのついた極めて薄い翼断面形状を用いて飛行していることを明らかにした。さらに、実際のトンボは、羽ばたきの1周期の間の打ち下ろしと打ち上げの両期間で、翼の反りを逆方向に変化させる制御を行っていることが明らかになった。 さらに、昆虫のような微小サイズの生物の飛行安定性の問題について、形状が相似な無尾翼機の滑空飛行を想定して、運動特性の解析を行った。その結果、我々の良く知っている航空機やターボ機械などのメートルサイズの翼と、昆虫のようなセンチメートルサイズの翼の飛行安定性の違いは、以下のようになることを見出した。翼のサイズが小さくなるにつれ、安定限界はあまり変化しないが、運動の周期が早くなり、その時定数は飛行物体の平均密度と寸法の積の平方根に比例する。一方、いろいろな荷重の中で最も厳しい翼の付け根の曲げモーメントによる応力を考えると、比強度(応力/物体の平均密度)が寸法に比例する。物体の寸法が大きいと、例え重くてもそれ以上に最大応力の大きい、すなわち比強度の高い材料を選ばざる得ない。逆に、物体が小さくなると比強度は小さくても軽い材料で飛行が可能となるため、一般に飛行物体が小さくなると物体の平均密度も小さくなる。従って物体のサイズが小さくなると、不安定の飛行体はますます短時間に不安定状態になり、安定な飛行体は短時間に安定状態に達することを見出した。
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