研究概要 |
本研究ではまず姿勢制御系で単一の感覚が働く条件で,感覚フィードバック経路の特性を同定して各感覚系の特性を定量的に求めた.ついで複数の感覚が働く条件で同定し,どの感覚が優位であるかを検討した. 具体的には被験者が直立するかこれと等価な仕事をしたときの足関節モーメントと身体傾斜角を計測し,傾斜角を入力とし足関節モーメントを出力とする感覚フィードバック経路の特性を周波数特性の形で求めた.傾斜角はLEDと光半導体によるポジションセンサシステムを用いて計測し,足関節モーメントは床反力計で計測した.そしてARMAXモデルのパラメータを推定し,周波数特性に変換した. 前庭系の特性は直立しているときの身体傾斜角を検出して同じ量だけ被験者の立っている台の角度を変え,足関節角を一定にして体性感覚の情報をなくしかつ閉眼の条件で求めた.体性感覚系の特性は身体を垂直な台に固定し足部のみが動けるようにし,足を乗せる台に被験者の体重に等しい重りを被験者の重心の高さに置いた倒立振子を制御する条件で求めた.視覚系の特性は身体および足関節角を固定し,計測した足関節モーメントを計算機に取り込み計算機内に構成した倒立振子の伝達関数の入力とする.この出力傾斜角に追従するサーボ傾斜台上にCCDカメラを設置して,カメラの映像情報をヘッドマウントディスプレイにより被験者に与える条件で求めた.ただしこのままでは制御ができなかったので,倒立振子の伝達関数と直列に比例+微分要素を挿入した.得られた周波数特性では前庭と体性感覚に微分特性が見られ,速応性は体性感覚,前庭,視覚の順であった. 次に複数の感覚が働く場合の感覚フィードバックの同定を行った.周波数特性の形から,前庭と視覚が働く場合は前庭系が,前庭系と体性感覚が働く場合は体性感覚が,全てが働く場合は体性感覚が優位と考えられた.
|