研究概要 |
本年度は有機薄膜としてPoly-3-Hexyl-Thiophene,および有機・無機のハイブリッド薄膜として,自然量子井戸物質である(C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4を選び,その非線形光学特性について,以下の研究を行った. (1)良質な有機薄膜の作製:現有のLB膜作製装置およびスピンコート装置等を用いて,膜作製時の下層水温度,圧縮圧,一定圧下の保持時間等,膜の物性を左右するパラメーターを制御しながら,試料表面においての散乱および試料の光損傷,劣化の少ない試料を作製した.Poly-3-Hexyl-Thiopheneについては,マクロな構造を制御したHead-to-Tail結合のものと構造制御されていないRandom結合のものを作製した. (2)周波数領域における非線形分光を用いた非線形感受率の評価:波長可変レーザー(光パラメトリック増幅器)を用いて,作製された良質試料について,4光波混合法を用いて,3次の非線形感受率の絶対値の測定を行ったところ,Poly-3-Hexyl-Thiopheneについては,Head-to-Tail結合されたものはRandomなものに比べて,約3倍3次の非線形感受率が大きくなることが確認された.絶対値としては10^9csuという有機の中で最も大きいものが得られた.また,(C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4については,その量子閉じこめ構造を反映して,10-5esuという非常に大きな3次の非線形感受率を得た. (3)時間領域における非線形分光を用いた応答速度の評価:7年度に完成した波長可変のフェムト秒レーザーシステムを用いて,非線形性の応答速度の評価を行ったところ,Head-to-Tail結合およびRandom結合とも数ピコ秒の高速応答を示すことが確認された.高速緩和のメカニズムについては現在解析中である.
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