研究概要 |
有機DAST (4'-dimenthylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate)結晶は大きな電気光学定数を有すると共に誘電率が小さいために,50GHz以上の超高速光変調に有利である。本研究では,徐冷法により育成したDAST結晶の電気光学特性の評価と,その新しい応用として60GHzミリ波の空間電界の検出を行った。 1)DAST結晶の大型化とその電気光学特性 本研究ではメタノールを溶媒とした徐冷法によりDAST結晶成長を行った結果,最大14x14x2mmの大型平板単結晶を得ることができた.成長した平板結晶はc軸にほぼ垂直であり,結晶面内にaおよびb軸を含み,吸収端はa軸に平行な偏光では720nm (b軸偏光では650nm)であった。育成したDAST結晶の表面に蒸着したギャップ長1mmのAlの平板電極を通じて電圧を印加して,波長780〜1064nmの範囲における光変調度からポッケルス定数を求めた結果,780nmにおいてr_<11>=75pm/VでありほぼLiNbO_3の2.6倍大きなポッケルス定数を有していることを確認した. 2. DAST結晶を用いた60GHzミリ波の放射電界強度のセンシング 本研究では,育成したDAST結晶を用いて60GHzミリ波の放射電界のセンシング実験を行った。60GHzミリ波源は出力80mWのGunnダイオードを用い,長さ40mmのテフロンの誘電体アンテナからミリ波をDAST結晶に照射した。実験では波長780nmのLDを光源に用い,反射型光学系により検出するためにDAST結晶(5x5x0.4mm)の片側には誘電体HRミラーを蒸着し,ミリ波電界により生ずる直交偏波成分を検出した結果,ミリ波の検出感度として0.5μV/mWが得られた。また,60GHzを放射するアンテナを横方向にスキャンすることにより光学的にミリ波の放射電界強度の測定を行った結果,拡がり角が28度であり従来の電気的方法により得られている指向性のデータとほぼ一致することを確認した。本方法は測定電磁界に擾乱を与えることなく放射電界をセンシングできる点が大きな特長である。
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