研究概要 |
二次非線形光学効果の発現を期待し、2,2'-ビピリジンまたは1,10-フェナントロリンを含む大環状化合物の合成を行った。まず,6,6'-ジブロモ-2,2'ビピリジンとα-シアノアセトアミドとの反応により、ピリジン4分子を含むテトラアザ大環状化合物を得たが、これがリチウムイオンを極めて選択的に取り込み、また、その際大きなコンフォメーション変化が起こることを見だした。MOPAC93/PM3による最適化計算によると、リチウムイオン取り込みにより超分子分極率βが大きく変化することがわかり、現在、嵩高い置換基導入により、さらにβ値の大きなコンフォメーションを与える化合物の合成を検討している。本研究における副次的発見として、本大環状化合物がリチウムイオンを配位することにより蛍光強度が1100倍以上増大することを見出し、リチウムイオンの微量分析試薬としての利用を検討している。次いで、2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンをチオ尿素と反応させて2-クロロ-9-メルカプト-1,10-フェナントロリンを得、さらにアルカリで処理することにより、1,10-フェナントロリン2分子が2個の硫黄原子によって結合された大環状化合物を得た。この化合物は、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属イオンと錯体を形成し、高酸化数状態を安定化させることがわかった。また、メスバウアースペクトル、マススペクトル、元素分析等により、これらはいずれもμ-オキソ錯体であると推定される。さらに磁化率の温度依存性を調べたところ、10〜40Kに不連続点が存在し、この前後で時期的性質が大きく変わることがわかった。これらの錯体は非対称構造をとることが予想され、二次非線形を示すことが期待され、さらに非線形性の温度変化を検討する予定である。
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