研究概要 |
フタロシアニン誘導体を用いた非線形光学材料として,フタロシアニン環へ可溶化置換基を導入した誘導体が主に検討されていが,共役平面構造に関する誘導体を用いた研究はほとんどなされていなことから,フタロシアニン系大環状化合物を系統的に拡大した誘導体,1)環拡大化ポリフィリン系,2)環拡大化フタロシアニン系,3)環拡大化ビスフタロシアニン系大環状化合物を用いて,非線形光学特性に対する環拡大化の効果を明らかにし,共役拡大によるマニピュレーションの可能性を明確にすることを目標として,そのLangmuir-Blodgett(LB)薄膜における分子配向性の解明を行った. 1)環拡大化ポリフィリン系大環状化合物LB膜;一連の環拡大化亜鉛(II)ポリフィリン誘導体の気水界面単分子膜における1分子当たりの極限占有面積,および分子モデルより見積もられる分子の最小占有面積と,気水界面上での吸収スペクトルより,これらの一連の錯体は気水界面で三次元結晶を形成しており,分子が4〜6層重なった状態であることを明らかにした.各錯体の水平付着累積膜においては,膜厚方向の配向性は環拡大化に相関することを見出した. 2)環拡大化フタロシアニン系大環状化合物LB膜;面内複環化フタロシアニン誘導体とその単環フタロシアニン誘導体の累積膜中での膜分子の配向性を,偏光吸収スペクトルの入射角依存性から一軸配向モデルにより解析し,一軸配向構造に対する複環化の効果を明らかにした. 3)環拡大化ビスフタロシアニン系大環状化合物;Lu(III)イオンを中心金属イオンとして有する一連の環拡大化サンドウィッチ型大環状錯体と,マトリックス分子としてアルキル鎖長の異なるリン脂質を用いた混合LB累積膜において,錯体の環の大きさによる配向の変化と,マトリックス分子ポケットによる錯体分子の配向構造の制御性を偏光吸収スペクトルおよびX線回折測定により明らかにした.
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