本研究では、強誘電挙動を示す高分子の一次構造中に比較的非線形性の大きい分子を導入し非線形光学効果ここでは特に電気光学効果を測定した。この場合強誘電的構造が乱れない様に分子の大きさ、また加工性・透明性に考慮し主鎖の剛直性、対称性を考慮した。したがって主鎖としては炭化水素、スルフィド結合、エーテル結合を持つものを選択した。非線形分子構造はニトロベンゼン、シアノベンゼン誘導体である。合成した強誘電性高分子は、側鎖型ポリアミド、奇数ポリウレタン、芳香族ポリアミド、ポリフェニルニトリル類の4種類である。ポリフェニルニトリル系以外は、安定性は良いものの従来のポールドポリマーと同様な性能であった。しかしポリフェニルニトリル類は他のものに比べ非常に大きな電気光学定数を示した。 今回大きな電気光学定数の得られたポリフェニルニトリル類は、1)光の吸収端の波長は、分子構造から予想される値より明らかにレッドシフトしていること 2)電歪定数(電界によるひずみ)が通常の高分子強誘電体より10倍以上大きいこと 3)分極処理により可逆的に吸収端が10-20nmすることから、分子間でフェニルニトリル基がある会合状態をとり、これが電界で会合性のよい方向へ変化する。これにともない屈折率が変化し大きな電気光学効果が得られたものと思われる。従来の研究では一分子の非線形性を中心に考えて分子設計が行われてきたが、外部電界による会合性の変化という集合状態の変化で大きな電気光学効果が得られたことは新たなメカニズムによる非線形光学材料の構築を示唆するものである。
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