研究概要 |
本年度は、ポルフィリン環のπ-電子雲を面外方向に導き、面内に存在したdipoleを面外方向に大きく伸ばす目的で、″N-混乱ポルフィリン″(NC-P)の環内部炭素に電子吸引基(ニトロ基)を直接導入することを検討した。 ニトロ置換「N-混乱ポルフィリン」(NCP-NO_2) NC-Pのニトロ化は1)Co(III)の亜硝酸塩を用いる方法、及び、2)硝酸/塩酸を用いる方法、により収率50%程度で合成に成功した。生成物(NCP-NO_2)は光沢のある緑色の結晶で、溶液の色も同じくあざやかな緑色であった。可視吸収スペクトルは、塩化メチレン中ではSoret帯が472nm,Q帯が658,700nmにややブロードなピークとして観測された。極性の高いDMSO中では、484, 638, 736nmにそれぞれシフトした。種々の誘電率を持つ溶媒中でのスペクトル変化から、極性溶媒中では分子内電荷移動が存在することが示唆された。また、NCP-NO_2の立体構造はX線単結晶構造解析によって明かとなった。ニトロ基が置換したピロール環は、他の3つのピロール窒素N1, N2, N3が作る平面に対して約42度傾いている。これに対して、残りのピロール環はそれぞれ、24, 17, 17度の傾きとなっていた。さらに、NCP-NO_2は容易に還元反応を受け(SnCl_2/HCl)、定量的にアミンに変換することが確認された。このアミン体の合成成功により、今後、ジアゾカップリング反応やイミノ化反応などを通して、フェニル基などの大きなπ-電子系をポルフィリン環上に直接導入することが可能となった。
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