研究概要 |
色素材料を中心とした有機非線形光学材料(2次と3次)の計算機化学(MO,MM,MD)による分子設計と合成,それらの非線形性と化学構造の関係について基礎的研究を行った。そして、色素固体の光物性は集合体での機能であるため、色素集合体の高次構造によって物性が大きく異なることを見い出した。すなわち、色素単結晶のX線構造解析や分子動力学(MD)法によるシミュレーションから集合体レベルでの分子のスタッキングを解析し、分子構造と光物性の相関性を確立することを試みた。そして、色素分子間でのπ-π相互作用によって分子が3次元的に自己集積化するキノン系色素、ピラジノスチリル系色素やピラジノフタロンシアニン系を新規に合成した。これらの色素はいずれも分子内CT型発色系をもち、薄膜上で吸収スペクトルが溶液中に比べて大幅に長波長シフトすること、3次の非線形感受率χ^<(3)>が、薄膜上で通常の対応する色素に比べ2桁以上も大きくなることを見い出した。すなわち、色素分子が3次元的なスタッキング構造をとり、色素の分子間距離が3.4-3.6Åになるとπ-平面間で強いπ-π相互作用が働き、結果的にχ^<(3)>が大幅に向上するとの知見を得た。このように、単一色素分子間での3次元的なπ-π相互作用を利用して材料を構築すると、有機非線形光学材料に最も有効な全π電子系で分子から材料を構築することができ、目的とする大きなχ^<(3)>の材料が得られるとの知見を得た。この種の方法論による研究成果は国内外を通じて余り知られていない。現代までの研究成果をチェコと日本の関連学会で発表し、原著論文(12報)として公表した。さらにこの方法論を展開するため、分子内CT型発色系をもつピラジン系色素をすでに多数合成しており、それらの蒸着膜について2次および3次NLO材料としての評価を検討しいる。また、合成した色素材料を希望に応じて広く提供しており、本領域メンバー(3グループ)との間で物性評価の共同研究を行い、成果を得ている。
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