研究概要 |
Tibet高原羊八井高度(大気深度606g/cm^2、標高4300m)での空気シャワー観測実験では、空気シャワーの到来方向を天頂付近に限ることによって、Knee領域を含む^*10^<14>-10^<17>eV領域の一次宇宙線による空気シャワーを、親の核種によらず、すべて観測することが可能である。一方、明野高度(920g/cm^2)では10^<16>eV以下の領域の空気シャワーの観測頻度はその化学組成に依存している。既に、Tibet AS実験では精度の良いKnee近傍の一次宇宙線全強度微分スペクトルを得ており(M.Amenomori et al.,APJ,Vol.461,p408(1996))、この全強度と種々の一次宇宙線の化学組成を仮定したシミュレーション計算(GENASコードを使用)によって、空気シャワーサイズ(Ne)・スペクトルの高度変化を求め、半八井および明野高度のデータと比較・検討することによってKnee近傍の一次宇宙線の化学組成の推定を行い、Kneeの起源に関する情報を得る。Tibet AS実験では各検出器の上に5mmの鉛板をのせシグナル/ノイズ比の向上を計っているため、データから直接には羊八井高度のNeを得ることができない。現在、この鉛の影響、装置に斜めから入射するシャワーのNeの検出器による観測の影響および解析手続きの妥当性を上記シミュレーションを用いて検討し、ほぼ明野高度のNeスペクトルと矛盾のない結果を得た。また、一次宇宙線組成推定のためのシミュレーション解析を進行中であるが、Knee領域の大局的一次宇宙線組成の推定結果を得る見通しを得ている。
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