標準的なシナリオによれば、連星中性子星は合体した後にブラックホールと降着円盤からなる系を生成する。その後、降着円盤は粘性によって徐々に角運動量を失いながら、ブラックホールに物質を落としていくと考えられるが、このときに発生する熱エネルギーからγ線バーストは発生する可能性があるとされている。このときγ線バーストのエネルギーの総量は、降着円盤の質量に依存する。本研究では、連星中性子星の合体、及びその後の降着円盤形成を調べるシミュレーションを主に行なった。 中性子星は一般相対論的な効果が重要な星なので、シミュレーションを行なうに当たっては、一般相対論的効果を取り入れる必要がある。ここでは、ポストニュートン近似を用いて最低次の相対論的効果を取り入れてシミュレーションを行なった。 今年度は、正確なシミュレーションを行なうためのテストに終始し、今のところ確実な結論は得るに至っていないが、テスト計算によると、以下のようなことが示唆されている。一般相対論的な強い重力の効果により、合体した後に物質は合体後の生成物(ブラックホールまたはブラックホールになる前の巨大中性子星)に飲み込まれやすくなる。従って、降着円盤を形成する物質の量は減る。これまで行なわれてきたニュートン近似でのシミュレーションにおいては、形成される降着円盤の質量はγ線バーストを起こすには十分でないとされてきた。従って一般相対論的な効果は、連星中性子星の合体によるγ線バーストのモデルを更に否定する方向に働く可能性がある。
|