研究概要 |
本研究ではダイヤモンド素材を使った多目的放射線検出器の研究開発を行った.人工ダイヤモンドはシリコンと同じ結晶構造と半導体的な性質を持ち,尚且,5.5eVの高バンドギャップエネルギー,高キャリア移動度,低比誘電率等,シリコンより優れた性質を持ち合わせている. 現在,人工ダイヤモンドは超高圧合成法,CVD法,イオンビーム蒸着法などの製法により作られ,それぞれ違った性質を持っていることが分かっている.これまでの我々の研究により高純度人工ダイヤモンドが放射線検出器として最も有望である事が判明している.そこで我々は,高純度人工ダイヤモンドを用いた放射線検出器を製作して,種々の照射試験を行い,放射線に感度を持つ素材の調査を行った. 現在までに作成された検出器のエネルギー分解能はこれまで天然ダイヤモンド素材から得られている最高の値である82keVをはるかに上回り,シリコン半導体検出器の性能に匹敵する16.6keV(FWHM)の値が得られ,放射比の高い3本のエネルギーをきれいに分離して検出することに成功した.この分解能はアンプ系のノイズに相当しており,今後アンプ系の改良によりシリコン半導体検出器の性能を上回る可能性も示している. これまでにα線源,X線源,電子線源の照射試験も行っているが,今後は紫外線領域まで放射感度を調べるとともにダイヤモンド検出器の諸性能を細かく調べ,さらにアバランシェ効果の可能性についても調べていく予定である.
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