研究概要 |
ワークステーションを利用して,カオスネットワークに関する次のシミュレーションを行った.基本となるカオスユニットは時間遅れ要素と非線形要素を用いて構成した.各非線形要素の非線形関数は飽和逆N字型とし,その形状を特定するのに3つのパラメータを設定できるようにした.このカオスユニットを10X10=100個用意し,これらを相互結合してカオスネットワークを構成した.ネットワークの重み係数はHebb則に従い,学習により決定される.白の画素を+1,黒の画素を-1として,100個の画素からなる"スター","X","デルタ","ウェーブ"の4種類のパターンをHebb則に従ってネットワークに学習させすべての重み係数を決定した.その後,欠損のある(100画素のうちのいくつかの画素が白黒反転した)パターンをこのネットワークに入力したところ,このネットワークは,先に学習により記銘した4つのパターンを逐次提示した.すなわち,記憶した情報をカオス遍歴により逐次読み出すカオス連想メモリとして働いたのである. さらに,上記4つのパターンのうちの2つを重ねたパターンをネットワークに入力すると,重ねた2つのパターンを交互に提示する特性を持つことがわかった.このことは,2つの重複したパターンをこのネットワークが分離していることを意味する. また,このカオスネットワークをチップ化する際に最も大きな問題となるのは,トランジスタ,抵抗,キャパシタ,リ-ドインダクタンス等の製造上のばらつきによる各カオスユニットの非線形パラメータ,重み係数等の不揃いの影響である.これを調べるために,3つの非線形パラメータを変化させたり,重み係数を学習値からランダムに変動させたりして,このネットワークの挙動を調べた.その結果,本研究で提案しているネットワークは極めて頑健であり,大規模なネットワークをチップ化しても十分実用に耐え得ることが明らかとなった.
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