研究課題/領域番号 |
08240201
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田地川 浩人 北海道大学, 工学部, 助手 (10207045)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1996年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 水素原子トンネリング / 媒質効果 / 反応速度 / RRKM理論 / アブイニシオ計算 |
研究概要 |
トンネル効果が観測されている水素原子移動反応は、WilliamsらおよびMiyazakiらの実験で代表されるように低温固相(マトリックス、結晶中等)中で観測されている。その意味で、観測されている反応速度等の実測値は、媒質の効果を含むものである。しかしながら、従来のトンネル効果の理論的取り扱いは、この媒質効果を2次的あるいはそれ以下の要素として考えられており、直接には取り扱ってこなかった。本研究では、トンネル効果と媒質効果の両方を同時に取り扱うモデルを構築し、いくつかの実測されている系に適用し、トンネル効果を含む反応速度が媒質によりどのような影響を受けるかを明らかにするのを目的とする。 メトキシラジカルからメタノールラジカルへの分子内水素原子移動反応は、、メタノール結晶中で4Kから77Kへの昇温により反応が進行することが知られている。これに対し、マトリックス中では、結晶中に比べ反応速度が大きく、4Kですでに水素原子移動が終了した生成物(CH2OH)が観測される。本研究では、この反応へ及ぼす媒質の効果を理論的に明らかにするため、気相(真空)中、メタノール結晶中および凝縮相(水クラスター)中での、この反応モデル計算を行った。また、反応が4K〜77Kと低温で進行することからトンネル効果も重要となると考えられる。そこで、本研究では、トンネル効果および媒質効果の両方を取り入れるモデルを構築し、反応への応用を試みた。 反応系の振動モードは、回りの媒質により影響を受ける。気相中では、反応系中の振動モードは、互いに直交しているが、近くに溶媒分子がくると、その溶媒分子の振動モードを通して、反応分子中の振動モードどうしがカップルすると考えることが出来る。結果として、振動数がシフトする。このシフト量を反応座標に沿って見積もることにより、媒質の効果を含んだ反応速度定数の計算が可能となる。実際の計算では、遷移状態理論の範囲で、トンネル効果を含むRRKM理論を適用した。これにより、トンネル効果および媒質効果の両方を含む反応速度の見積もりが出来る。計算の結果、反応速度への媒質効果は、古典的障壁より低いエネルギー領域(トンネリング領域)で顕著になることが明らかになった。また、得られた反応速度は、77K以下の低温で、k(気相)<k(結晶中)<k(水クラスター中)となり、この傾向は、定性的ながら、実験値とよく一致した。
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