研究概要 |
梅雨は,アジアモンスーンの一環として起こる東アジアの顕著な降水現象であり,ユーラシア大陸の水・エネルギーフローを特徴づける現象である.本研究では,梅雨前線帯と共に,これまで調査が不十分であった南半球亜熱帯域の降水帯SPCZ(南大洋収束帯)・SACZ(南太平洋収束帯)も対象として,これら3つの亜熱帯前線帯と熱帯モンスーンを結びつける水循環過程を調べた.本年度の研究成果は以下の通り. 1.陸域を除いた水惑星大気大循環モデル内にモンスーン的な(局所的に集中し中心が赤道からやや離されている)熱源を置き,それに伴ってできる亜熱帯前線帯について数値実験を行った.亜熱帯前線帯の発達には,熱源が作る下層の循環による水蒸気輸送と,上層の亜熱帯ジェットのトラフが重要であることがわかった.また亜熱帯前線帯自身の降水による大気加熱をカットする実験を行った結果,前線帯自身の加熱が,前線帯の下層の西風強化に重要であることがわかった. 2.ISCCP/B3データを用いて,SPCZとSACZの周辺域の積乱雲の集合体クラウドクラスター(CC)の活動を調べた.両地域の活動には違いがあり,大陸から離れた海上のSPCZ周辺ではCCは南緯25度より低緯度側のSPCZ付近に存在するが,南米大陸の東岸にあるSACZ周辺ではより高緯度側まで分布しており,大陸の存在がCCの活動に強い影響を与えることがわかった. 3.衛星搭載のマイクロ波放射計SSM/Iデータを用いて,亜熱帯前線帯付近の水蒸気場を調べた.梅雨前線帯では東部と西部で水蒸気量に大きな違いがあること,SPCZやSACZでは緯度による水蒸気量の違いが大きいことがわかった.
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