研究概要 |
従来行われてきた地表面のポイント観測と違い、衛星計測からは広域かつ詳細な観測情報が得られる。その利点を生かし、衛星計測により得られる地表面水文情報を大気大循環モデルと結合させることにより地表面の大気に対する影響を評価できる。大気大循環モデルはCCSR/NIES大気大循環モデルを使用し、衛星計測により得られる情報の解像度に合わせるため、T106(320×160)の水平解像度とした。従来のスキームのままでは積分CPU時間の観点でT106の実験には不十分であることから、それを実行可能にする作業を行った。従来から成されている重力波のノイズ削減のためのsemi-implicitスキームでは渦度と比湿の予報に対しては時間的にimplicitに評価されていない。この渦度と比湿の予報に対し、緯度一定方向の平均移流の項を台形implicitに評価されていない。この渦度と比湿の予報に対し、緯度一定方向の平均移流の項を台形implicitで扱うことにより時間ステップを延ばす(Simmons,A.J.,et al,Meteorol.Atmos.Phys.,40,28-60,1986)。結果としてはT21の水平解像度時において時間ステップ数が0.75倍となり、効果が得られた。次にこの水平高解像度大気大循環モデルを使用し、衛星計測値の導入を仮定した土壌水分量の変動実験を行った。初期値、境界値には全球土壌水分プロジェクト(GSWP)による1度メッシュの土壌水分量分布を用いた。8月の実験において、土壌水分量を積分開始から変更しないでそのまま与えたもの、8月に初期値として入れ替えた実行した実験、さらに初期値として入れ替え、境界値として毎ステップ与えた実験を行い比較した。水平解像度を増したことからT21と比べて局地性の現われた降水分布が得られた。初期値、境界値を与えた実験からは、使用している地表面モデルでは土壌水分量を衛星計測値を初期値として与えても、1カ月のスケールで衛星計測値との食い違いが現われてくることが示唆された。
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