研究概要 |
結晶粒径の微細化が超塑性の発現を大きく左右することから本研究では,結晶粒微細化を目的として利用される粒子分散組織と2相混合組織における結晶粒の粗大化や安定性についてのコンピュータシミュレーションを行い,第2相による結晶粒成長の抑制効果を定量的に評価した. (1)粒子分散組織 分散粒子による結晶粒成長の抑制効果については,Zenerが1948年にピン止め力を定量的に評価し,母相結晶粒の平均粒径Rと第2相粒子の平均粒径rとの間にR=4r/3fの関係があることを提唱した.ここで,fは第2相の体積分率である.この式は粒子が組織中にランダムに分散し,そのとき粒界上にある粒子が一律にF_<pin>=πrσのピン止め力を粒界に及ぼすという仮定の元で導出されている.しかし,この式は,近年のコンピュータシミュレーションの結果や,実験データと一致しないことが指摘されている.本研究では,まず,Zenerによる上記の仮定の再検討を試みた.粒界が粒子によるピン止めを受けた際の柔軟性を120°の凹凸に評価し,そのときの粒界上の粒子数を見積もり粒径の相関式を以下のように導出した. R=(3πr)/(4f^<1/2>) (2次元) R=(4r)/(3f^<2/3>) (3次元) 2次元の式はシミュレーションの結果をまた3次元の式は実験値を良く説明できることが明らかとなった. (2) 2相混合組織 第2相の分率f_sが10%以上の組織は,それぞれの相の結晶粒がお互いの粒界上に位置し,より組織を微細化するため高温での組織安定性も高く超塑性発現に非常に効果的である.コンピュータシミュレーションの結果から,主相と副相の平均粒径R_MとR_sの相関式が次式のように導かれた. (].SU.[) (2次元および3次元) 上式は従来報告されている実験値についても適用可能であることが明らかになった.
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