結晶材料の超塑性では粒界滑りが重要な役割を果たすことが知られている。粒界構造、粒界滑り等の解析はこれまで種々の方法で行われてきた。特に、透過電子顕微鏡(TEM)による解析は、極めて高分解能での観察や微小領域からの結晶学的あるいは化学的情報の収集が可能なため、これまで広く用いられてきた。 しかし、その大部分は高温で超塑性変形させた材料からTEM用の薄膜試料を作製しそれを観察するといういわゆるpost mortem解析が主流であり、実際に超塑性変性中の個々の結晶粒界の挙動に対する知見は得られてない。 本研究は電子顕微鏡内その場実験により、現に超塑性変形中の結晶粒界の挙動を高分解能でその場観察した。 即ち、CU-Ga合金において粒界を高エネルギーの電子線で照射すると-70℃から200℃の温度範囲で激しく振動する粒界があることを発見した。粒界が振動を起こすか否かは、粒界の方位に依存するが、この発見は固体内での粒界が極めてダイナミックであり、超塑性の機構を考察する上で興味深い。 これらの成果は科学誌に論文として公表されるとともに、平成8年7月に開催された「第8回異相界面/粒界に関する国際会議」、および平成8年11月に開催されたMRSで発表した。また、平成9年1月にアリゾナ州立大学で開催された「界面の原子構造と化学に関するワークショップ」で招待講演を行った。
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