研究概要 |
材料中の原子空孔を選択的且つ高感度に検出できる陽電子消滅法を用いて,最近高速超塑性が見い出され応用的に注目を集めているアルミニウムとその合金,およびそれらに第二相粒子を添加したものについて,結晶粒界・粒内における空孔型欠陥の濃度を測定し、超塑性現象のより定量的な理解に向けて,原子レベルの基礎的な情報を抽出した. 本研究で明らかになったことを以下に要約する. 1.粒内の原子空孔,結晶転位などの格子欠陥は,700K以下ですべて消滅する. 2.逆に結晶粒界に存在する欠陥は900K焼鈍でも開腹しない.この事実は,粒内と粒界の格子欠陥を分離して,研究できることを示している. 3.粒界での陽電子消滅割合は,粒径が小さくなる程大きくなること,3ミクロン以下ではほとんどの陽電子は粒界で消滅する.この結果は,陽電子消滅法により,超塑性材料の粒界に於けるキャビテーションの核形成・成長を感度よく捉えられることを示す. 4.ホットプレスのみで作成された試料よりも更に押し出し加工を施された試料の方が陽電子が粒界に捕獲される割合が大きい.これは,結晶粒のアスペクト比と陽電子の拡散・捕獲機構で説明される. 5.粒界に於ける陽電子の消滅寿命は単一原子空孔中のそれよりも高い.これは粒界には複空孔もしくはそれ以上の自由体積が存在することを示唆する. 6.粒径が十分小さく超塑性を発現する試料について,超塑性が発現する条件下では,粒内に存在する空孔型欠陥は動的に回復し,蓄積されないことが示唆された.
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