研究概要 |
タケに代表される節構造を有するイネ科植物では,横断面の微視的な傾斜構造と,節間距離で示される巨視的な傾斜構造を持っており,これら二つの傾斜構造は機能分担されていることが示唆されている.本研究は,これらの傾斜構造を形成する過程を解析したものである.材料としては,イネ科植物の中で,短期間でおおくの節間を形成する典型的な作物として,スィートソルガム(Sorghum bicolor Meonch)を選んだ.品種は,晩生(シロップソルゴ-2号),中生(ハイブリッドソルゴ-),早生(ハイシュガ-ソルゴ-、シロップソルゴ-1号)の各品種を用いた.また,播種時期を5月20日、6月10日、7月6日の3段階とした。栽植密度は、いずれも80cm×15cm、一本植えとした。解析の結果,節間位ごとの節間長のパターンは、品種や播種時期などによってピークの位置やサイズなどの細部においては異なるが、基本的には、いずれも茎の基底から基部から先端部へかけて傾斜構造が認められた。また、節間の外径も先端部へと細くなる傾斜構造が認められた.以上、節間が中空なタケとは異なり,節間の内部が詰まっているスィートソルガムでも,茎の垂直方向(長軸方向)における節間距離や節間の形,あるいは,水平方向(横断面)における直径,組織の形状においても,傾斜構造をとることが認められた.また,垂直方向の傾斜構造の発達過程を調査した結果,個体の齢を基準に表現すると、各節間は長さの面からは同じ速度で,基部から上部へと形成され,傾斜構造をとることが認められた.これらの傾斜構造が植物体の群落維持のために重要な役割を果たしていることが推察された.今後,茎横断面における傾斜構造あるいは節間距離における傾斜構造を誘導する要因について検討することが必要であると考える.
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