研究概要 |
本研究においては、格子不整合を有する複合積層化合物(RS)_<1.2>(TiS_2)_2(R=La,Ce)を用いて3d遷移金属を挿入した層間化合物(RS)_<1.2>[M_X(TiS_2)_2](M=Mn,Fe,Co.Ni)を合成し、結晶構造、電気的性質、磁気的性質を明らかにした。これらの層間化合物は電気的、磁気的性質が積層する各層で異なる。電気伝導性は、層間に3d遷移金属を挿入することにより金属的な電気抵抗率の温度依存性が温度にほとんど依存しなくなることを明らかにした。これは挿入される遷移金属原子の量により、電子構造の変化と電子状態の局在化が同時に起こるものと考えられた。これらの化合物を用いることによりナノスケールで電子構造を変化させ、電気伝導性およびその温度依存性を制御することができる。一方磁気的性質として、磁性層間距離が17Åと長く、相互作用のほとんどない2次元磁性体を実現した。また、磁性化合物である(CeS)_<1.2>(TiS_2)_2を用いた層間化合物では、ナノスケールで、二次元の強磁性体と、強磁性層が弱く結合した二層系反強磁性体とを複合させることにより、磁化が9段階に変化することを見いだした。この結果は極低温で得られたものではあるが、転移温度の高い遍歴電子系強磁性体とメタ磁性体を、非磁性のスペーサー層(絶縁体層が有効と思われる)を用いて磁気相互作用することなく空間に配置(積層)させれば、多段階の磁化過程を有するナノスケール傾斜磁性体を創出することが可能であることを示したものである。
|