研究概要 |
高周波マグネトロンスパッタリング法を用いて,電気接点用Ag-Sn系合金薄膜を作製し,膜成長方向のSn濃度を階段的に傾斜制御することによって,耐硫化性および接点材料としての電気的特性を向上させることを試みた. X線光電子分光分析により,Ag-Sn合金薄膜の表面にはSnが偏析しており,大気中の酸素と結びついてSnO_2の皮膜が形成されていることがわかった.このSnO_2皮膜の存在によって,H_2Sなどの腐食性ガス分子は,Ag原子と反応できず,結果として耐硫化性が向上する.また,X線回折実験により,Ag-Sn合金薄膜はAg_4Snの金属間化合物をなっていることがわかった.この結晶構造を有していることも,純Agに比べて耐硫化性が高いことの要因の一つであると考えられる. Ag-Sn合金層は耐硫化性が高いものの,純Agに比べて電気伝導率が低いため,電気接点用材料としては不向きである.そこで,電気伝導性の良い純Ag膜上に,耐硫化層としてAg-Sn合金層を積層させた.その結果,高い耐硫化性を保ちながら,電気的特性にも優れた電気接点用材料を開発することができた.特に,[Ag-30Sn/Ag-20Sn/Ag]3層膜において,純Ag膜に匹敵する電気的特性(抵抗率〜2μΩcm)と,非常に高い耐硫化性(初期接触抵抗2.4mΩ,硫化試験後接触抵抗4.7mΩ)を同時に実現することができた.
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