研究概要 |
高周波スパッター法によってFe/AlN積層膜を作製すると,積層回数が増えて一層ずつの厚みが薄くなるにつれて,Feの格子定数が増加するとともに,結晶子径が2nm程度まで減少した.膜の磁性は印加する磁場の方向に対する異方性が強く,膜面に対して平行に磁場を印加しするとソフトな強磁性を示した.その飽和磁化の値は3回および8回積層膜において,α-Feの飽和磁化より10%以上大きな値が見られた.この大きな飽和磁化に対応して,メスバウア分光においても大きな内部磁場成分の存在が確認された.これらは界面において部分的に窒化鉄を生成していると考えるとよく説明できた.またFeとAlN層の界面は決して急峻な界面ではなく,界面付近には窒素によって4配位されたFeが生成しており,これに伴ってAlN層では金属Alが析出していることがX線吸収スペクトルおよび光電子分光の測定結果から考えられた.Feの格子定数が積層回数とともに膨張した現象も,窒化鉄が次第に生成しているとして説明できる.これらの実験結果は,各試料を積層化することによって試料全体に対する界面部分の体積割合を増やし,さらに各種の分光法によって状態分析することによって,界面の評価法を極めて有効に行うことができることを示している.また共有結合性が強く高温まで化学的にも安定であると考えられるAlNセラミックスの場合でも,室温において高周波スパッター法によって金属Feと積層すると,界面から数nm程度の深さの領域においては窒素を放出してα-Feに供給して窒化鉄に類似した状態を作ることがわかった.
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