研究概要 |
本研究の目的はエナンチオ制御下の修飾を可能にするシクロヘキサジエノンのキラル等価合成素子の創製とその活用にある. まず,ベンゾキノンとシクロペンタジエンとの付加体から得たメソ対称3環性エンドジオールからキラルリガンド-金属触媒法および酵素触媒法の双方によって基本キラル合成素子の両対掌体に到る合成法を確立した.ついでこのキラル合成素子の機能性を反映させる天然物の合成を検討した.その結果,ビタミンDのA環部単位,シキミの成分でありまた多様の芳香族天然物の生合成中間体でもある(-)-シキミ酸,そして抗菌性植物毒(+)-epiepoxydonおよび(+)-PT-toxin,さらにイタリア産キノコの産生する細胞毒物質(-)-tricholomenyn Aのエナンチオ制御合成に成功した.最後の3者は最初のエナンチオ制御合成であり,これによってこれらの天然物の絶対配置が初めて決定された. シクロヘキサジエノンキラル等価合成素子の活用の原則はコンベックス面への選択的な修飾と修飾後の逆ディールス・アルダー反応によるマスクされたオレフィンの復生とさらにそれに対する立体制御下の修飾にある.ここで得られるキラル中間体を適切に官能基変換することによって結果的にシクロヘキサジエノンのエナンチオかつ立体制御下の修飾を行い,これによって多様の環状ならびに鎖状の対象物のエナンチオ制御下の構築を可能にするものである.本年度迄の検討によって酵素法ならびにキラルリガンド金属触媒法の双方による大量合成法と基本的活用の原則が明らかにされ,今後の実用的活用の基礎をつくることが出来た.
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