研究概要 |
エクチナサイジン類は、ほやから単離された複雑な構造を有する海洋天然物である。これらは非常に顕著な抗腫瘍活性を有することは明らかになっている。しかし、エクチナサイジンを生産するほやの大量採集が困難ゆえ、広範な抗腫瘍活性研究のためのサンプルの大量供給を妨げられている。我々はこの問題を克服するために、光学活性体の実践的な全合成法の開発を行っている。 その合成法は総合的な効率向上のため、分子全体を3つのセグメント(A環部,DE環部,FG環部)に分け、それらを連結し合成を進めていく収束的な方法を計画している。 今年度はまず、両端の芳香環部分であるA環とE環の合成ルート開発の検討を行った。両芳香環とも、大量(50g scale)合成可能なルートの開発することができた。A環部は、安価で入手容易なセサモ-ルを出発原料として、芳香族水素の位置選択的リチオ化、ホウ素への金属交換を経た、水酸基の導入を行い。その水酸基へのアリル化、続いて熱条件下のアリル転移反応によりアリル機の導入を行った。生じた水酸基をトリフラートへ変換後、ニッケル触媒によるメチルグリニヤール試薬の付加を行い、セサモ-ルより7段階通算収率55%で、酸化段階の整ったA環の構築が可能となった。E環は2-メチルカテコールを出発原料としてジオールに対する位置選択的トシル化反応とユウ-ドスミン反応によるホルミル化反応を鍵段階として合成した。 このように複雑な構造を有する分子の全合成においては、緻密なモデル実験が不可欠である。次に、B環部構築のモデル実験を行った。A環構築の方法を用いて合成したモデル化合物においてB環構築の検討を行った。A環のフェノールアルファ位とB環に相当するアルデヒドにおける環化反応は温和な条件下(NaHCO_3,MeOH)高収率(100%)で進行した。 現在、合成法を確立したE環を出発原料としてEDC環部構築とA環との連結を検討中である。
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