研究概要 |
申請者らはこれまでに各種遷移金属に対しトランスの位置にまがたってキレート配位する光学活性2座ホスフィン配位子2,2“-bis[1-(diarylphosphino)enthyl]-1,1"-biferrocene(arylTRAP)および2,2“-bis[1-(dialkylphosphino)enthyl]-1,1"-biferrocene(alkyTRAP)を種々合成し,その触媒的不斉合成への応用を行ってきた. これまでもっぱらロジウム触媒による反応において成果を上げていたが,本年度は新たにパラジウム触媒による反応の開発を手掛けた.さまざまな検討を行った結果,1,6-エン-イン化合物の不斉環化反応(文献1)やRh-Pdバイメタリック触媒形によるα-シアノエステルのアリル化反応などの新規不斉触媒反応(文献2)を開発することができた. また芳香族有機金属試薬とハロゲン化アリールのPd触媒不斉クロスカップリング反応(鈴木カップリング)による軸不斉ビアリール化合物の合成についても検討した.不斉反応という観点からはまだ大きな成果は得られていないが,TRAP配位子が本反応において顕著な加速効果を示すという大変興味深い結果を得た.TRAP配位子がパラジウムにトランスキレートの様式で配位することを考慮に入れると,この事実は反応機構的にも興味深い.今後はさまざまな基質の反応にTRAP配位子を適用し,この加速効果の一般性,有用性を検証しながら鋭意検討を加えることにより,本反応が高次構造有機化合物の合成に役立つ,実践的分子変換法となるよう努力する.
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