研究概要 |
有用な生理活性を示す天然ならびに非天然有機化合物には,光学活性を有するものが数多く知られており,それらの生理活性は不斉炭素の立体化学に大きく左右されることから,構造活性相関の探求や,新規医薬あるいは農薬の創製のためには,任意の立体化学を有する不斉有機分子の高効率・高選択的な実践的構築法の確率が必要不可欠である。そこで本研究では,これらの課題に積極的に応える観点から,これまでの研究過程で得られた多くの知見を活用して,両鏡像体ともに入手容易な不斉源である酒石酸エステルを用いた新たなキラル反応場の創成による不斉有機分子の実践的構築法の開発を試み,以下のような研究実績を挙げることが出来た。 1)酒石酸エステル亜鉛ジアルコキシドの亜鉛原子に結合および配位したアリルアルコールとニトリルオキシドの間でエナンチオ選択的な付加環化反応が進行し,対応する光学活性2-イソオキサゾリンが高立体選択的に得られた。さらに反応条件の最適化を検討することにより,触媒的反応に発展させることができた。また,不斉増幅現象も見出すことができた。 2)上の不斉1,3-双極子付加環化反応のニトリルオキシドに代え,電子吸引基を有するニトロンを用いることにより,対応する付加環化生成物であるイソオキサゾリジンを高い光学純度で得ることができた。この付加環化反応もピリジン N-オキシドのようなニトロンのダミ-分子を配位子として添加することにより,触媒化できることを明らかにした。 3)酒石酸エステルの亜鉛・マグネシウムジアルコキシドを不斉触媒として用い,ニトロンのジアルキル亜鉛による不斉求核付加反応を実現することができた。
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