研究概要 |
マンガン金属に微量の塩化鉛(II)とクロロトリメチルシランを添加すると、マンガン金属が活性化され、その表面から速やかに電子が出てくることを見いだした。このマンガン-鉛系でヨウ化アルキルを処理すると、還元によりアルキルラジカルが発生すること、さらに、そのラジカルはこの還元雰囲気下で分子間反応が行なえる程度の寿命をもつことが明らかになってきた。複雑な分子骨格の合成には、温和な反応条件下に反応位置や立体化学の制御が不可決である。この研究の目的はラジカルや陰イオンだけでは行なえない多段階の反応を、それらを連続して発生させることにより、それぞれの活性種の反応の選択性の違いを活かし、効率よく選択的に行なうことである。上記のマンガン-鉛系を利用し、ラジカルと陰イオン種を連続的に発生させることにより、炭素-炭素結合を段階的に生成し、多分子を一挙に連結する反応を開発した。「アルキルガジカルと陰イオン種の連続発生と利用」という有機合成の新しい方法論を提唱することができた。以下の研究成果を、学術論文として報告した。(1)マンガン-鉛系を用いるヨウ化アルキル、α,β-不飽和エステル(あるいはニトリル)、アルデヒド(あるいはケトン)の3分子連結反応を見いだした。(2)この手法の応用として、マンガン還元により生じたアルキルラジカルの、アリルアルコール類のアクリル酸エステル誘導体に対する1,4-付加をきっかけとするIreland-Claisen転位反応を開発した。
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