研究概要 |
以前、パラジウムを触媒とするオレフィンのワッカー型アミノカルボニル化において尿素、スルフォンアミド、及びexoーカーバメートが窒素求核種として有効に働くことを報告した。[反応条件:cat.PdCl_2,CuCl_2,CO(1atm),室温、メタノール中]。なお、exoーカーバメートとは、アミノカルボニル化の結果、カ-バメート官能基を環骨格の一部として有する生成物を与えるような基質を示すこれに対し、endoーカーバメート(アミノカルボニル化の結果、カ-バメート官能基を環の置換基として有する生成物を与えるような基質)は同様の反応条件では全く反応しない。厳しい反応条件では分解してしまう。 溶媒や添加剤などを詳しく検討した結果、メタノール中、2〜3当量の酢酸ナトリウム、18当量の酢酸トリメチル存在下、30℃、1気圧の一酸化炭素という反応条件でendoーカーバメートのアミノカルボニル化が収率よく進むことが分かった。興味深いことに、同条件下では、構造的に対応するexoーカーバメートは全く反応しないことも分かった。 この興味深い発見の一般性を検討する目的で、同一分子内にexoーカーバメートとendoーカーバメートの2種類の官能基を有する基質に上記2種類の反応条件を適用した。期待通り、exoーカーバメート部分はcat.PdCl_2,CuCl_2,CO(1atm),室温、メタノール中で選択的に反応し、endoーカーバメート部分はメタノール中、cat.PdCl_2,CuCl_2,2〜3当量の酢酸ナトリウム、18当量の酢酸トリメチル、30℃、1気圧の一酸化炭素という反応条件で選択的に反応した。同様の官能基選択的な反応はendoーカーバメートとスルフォンアミド、endoーカーバメートと尿素の間にも観察された。
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