研究概要 |
結晶性のポリエチレンと非晶性のポリ(2-トリエトキシシリル-1,3-ブタジエン)両セグメントからなる新規ブロック共重合体を合成し、その有機合成における反応場としての有用性を検討した。 ブロック共重合に先立って2-トリエトキシシリル-1,3-ブタジエン(I)の単独重合性を検討したところ、開始剤の対カチオンにカリウムを用いると、-78℃、70時間で設計どおりの分子量と狭い分子量分布をもった無色の粘稠な液状ポリマーが定量的に得られた。リチウム系で重合を行うと、70時間重合後も収率も定量的ではない。生成ポリマーのGPC曲線は単峰性ではあるものの低分子両側に大きなテーリングが見られ、重合中に副反応により活性末端アニオンの失活が起きたことが示唆された。生成ポリマーのミクロ構造は対カチオンの種類と溶媒の組成に依存し、対カチオンにカリウムを用いて重合した系では1,4-E,1,4-Z、1,2-構造の混合物に、対カチオンにリチウムを用いて重合した系では、THF/ヘプタン混合溶媒系でほぼ100%の1,4-E構造を有するポリマーが得られた。1,3-ブタジエンとIのブロック共重合では、単にモノマーの逐次添加をするだけではなく、ブタジエンの重合が完了した後に生長末端アニオンに対して約二倍量のtert-ブトキシドを加えてから重合を行った場合のみ充分なシリルブタジエンセグメントを有するブロック共重合体が生成した。ブロック共重合体に対し、トルエン中Rh(PPh_3)_3Clを触媒として接触水素添加を行ったところ、熱トルエン、熱クロロホルムに可溶な白色ワックス状のポリマーが得られた。このポリマーは熱トルエンや熱クロロホルム中では均一に溶けているが、室温まで冷却すると沈澱してくることから、期待通りの溶解性変化を有する高分子試薬となる可能性が示された。
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