研究概要 |
バクテリア光合成反応中心のX線結晶解析に続いて,アンテナ錯体の構造が明らかにされ見事な自然の仕組みが明らかにされたが,膜を貫通するα-ヘリックスからのびたヒスチジン残基のイミダゾールがクロロフィルのMg金属中心に配位してクロロフィルを固定し,円筒状に配列させた集合体を形成している。この構造を模したナノ配位組織体を形成させるため,ポルフィリンの相対するメソ位置(5,15位)にイミダゾールを導入した化合物の中心金属を6配位性のMgを導入すると,低濃度の2量体からmM濃度で3量体の形成が進行する濃度依存性の組織化が認められ,アンテナ型のポルフィリン集積体への構造展開が可能であることを見いだした。 また緑色光合成細菌のアンテナ錯体クロロソームの組織化で水酸基とMgとの間の配位結合の重要性が示唆されていることから,ヒドロキノン置換ポルフィリンとMg(II)との相互作用を用いて検討したところ,ヒドロキノン部位のプロトンとそれに隣接したピロールのβープロトンに顕著な高磁場シフトが見られ,配位組織化が示唆された。 さらに強力な金属ーキレート配位子を用いて光合成アンテナ錯体に見られるエネルギー貯蔵リング構造体の組織化を目指して8ーヒドロキシキノリン置換ポルフィリンを合成した。これはZn(II),Ga(III)金属イオンを加えるだけでと容易に錯体を形成し,それぞれ2,3個のポルフィリンをオキシンー金属錯体周りに集積組織化できることを見いだした。Zn錯体は平面4配位構造が示唆され,一方Ga錯体は正八面体錯体で,ポルフィリンは環境の異なった3つの化学種として存在することを示す分裂パターンを与えたことから,生成した錯体の立体配置がmeridional異性体であると結論した。またオキシン配位子はNMR時間スケールで金属中心上で交換反応を行っていることを明らかにした。
|