研究概要 |
阪神大震災において,多くのコンクリート構造物に甚大な被害が生じた.独立柱式橋脚の場合には,ある箇所にヒンジが発生し破壊が生じると,構造物全体の崩壊につながる.一方,ラーメン橋脚のような不静定構造物では,一般に,一部材の破壊が即構造物全体の崩壊に至ることは稀であると考えられてきた.しかし,今回の地震ではいくつかのRCラーメン橋脚が崩壊するという大被害が生じた.これまで,RCラーメン橋脚の耐震設計を行なう場合,部材の耐力と靱性をどのように考えればよいか,また,破壊順序と崩壊形式をどのようにすればよいか等に関してはほとんど明らかにされていなかった.このようなことから,今回の震災を契機として,ラーメン橋脚においても上記の問題点を早急に解明しておく必要がある.本研究は,阪神大震災で被災したRC構造物の中から,新幹線に用いられている2層ラーメン橋脚を対象にして,1)崩壊した構造物の地震応答性状,2)各部材の靱性率が構造物全体の応答性状におよぼす影響,3)崩壊形式が構造物全体の挙動におよぼす影響等を,小型RC2層ラーメン供試体を用いた仮動的実験と応答解析から明らかにしようとするものである. 実験及び解析から以下のことが結論される. 1)RC2層ラーメン橋脚において,柱にせん断破壊が生じないならば,残りの各構成部材の耐力および靱性率,破壊順序が構造物全体の応答性状に及ぼす影響はそれ程大きくないことが明らかになった. 2)断面を約30%増加させた耐力型の供試体では,RC2層ラーメン橋脚において,曲げおよびせん断耐力を増大させた場合,地震による損傷は小さく,大地震後の供用性という観点から見れば好ましいと考えられる. 3)崩壊した実構造物の応答解析結果から,構造物の崩壊は柱にせん断破壊が生じ,地震発生後数秒で崩壊に至ったと推測される.
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