研究概要 |
地震時火災対策では,種々の活動阻害要因が作用する中での信頼性評価が必須となる.本研究では,阻害要因を制約型と切断型に分け,まず,抑止アークを活用したペトリネット表現法を開発した.そして,それらを出発点とし,その視覚性,結合性を活用することで,事前対策の有無や事後対応計画の良否等々も発想的にネットに組み込むことが可能であることを示した.次に,車社会の今日,緊急車両は一般車の渋滞の中を現場へと向かうとし,その走行阻害のペトリネット・シミュレーションシステムを具体化し,交通量が10台/分・レーン程度になれば,走行速度は計画速度の半分に低下する可能性があることを示した. 以上の基礎研究を基に,金沢市における防災拠点と火災現場を設定し,出火から通報・指令・出動を経て消化に至る消防活動の動的ペトリネットモデルを開発した.火災は,風化・風横・風上への延焼拡大のネットとし,その阻止の可能性を評価するネットを構成した.阻害要因としては,まず,各走行区間での一般車による制約型阻害を前出のシミュレーションと連動化させて組入れた.地震時の制約型阻害としては,通信系の障害,沿道施設からの落下物,路面被害,切断型阻害としては,液状化に伴う橋梁破損,水利網被害を抽出し,それぞれのペトリネットモデルを結合化させた.そして,適用地域の調査を基に,交通量は早朝・深夜と日中の2ケース,風速は2m/sと10m/sの2ケースを想定し,通常時と地震時での火災延焼阻止の阻害度分析シミュレーションを実施した.その結果,切断型阻害の発生が抑止できたとしても,地震が日中に発生すれば,風速が2m/sと弱くても,一般車による緊急車両の走行阻害により大火となる危険性が高いことを明らかにし,その対策研究の重要性を指摘し,本方法の適用可能性を含め今後の課題を整理した.
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