研究概要 |
硫酸還元菌の持つ高分子量チトクロムは16個のc型ヘムを持つと考えられている,分子量67KDaの可溶性タンパク質である。一次構造からその立体構造は4ヘム・チトクロムc3の部分構造3つと1ヘムチトクロムc‐553の部分構造1つから構成されていると予想でき,遺伝子重複により進化的に発生したタンパク質とも考えられている。16個もの酸化還元中心を持つことから,硫酸還元菌内のさまざまな酵素間の電子伝達体として働くと考えられ,その機能も注目に値する。本研究ではD.vulgaris Miyazaki F株から抽出した高分子量チトクロムの結晶のX線回折の分解能をさらに上げるために結晶化の条件検索をした。既に得られていた条件(クエン酸緩衝溶液,pH5.6,20%2‐プロパノール,20%PEG4000)で析出した微結晶(0.01mm)をカコジル酸緩衝溶液中でPEG4000を沈殿剤としたタンパク質溶液にシ-ディングしたところ,2週間で,0.8×0.4×0.1mmの結晶が析出した。この結晶を高エネルギー物理学研究所の放射光施設の巨大分子用ワイセンベルグカメラを用いて回折実験を試みた。その結果,空間群を特定することができ,3.8A分解能のネイティブ結晶の回折データを収集することができた。この新しい結晶は斜方晶系に属し,空間群はP2l2l2l,各格子定数はa=89.8,b=129.1,c=61.6Aであった。現在重原子誘導体結晶の調整を進めている。
|