研究課題/領域番号 |
08250208
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
影山 龍一郎 京都大学, 医学研究科, 助教授 (80224369)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1996年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | ヘリックス・ループ・ヘリックス / 神経分化 / 網膜 / レトロウイルス / ノックアウトマウス / 遺伝子ターゲッティング / 転写因子 |
研究概要 |
哺乳動物の神経分化機構を転写因子のレベルで明らかにするために、ヘリックス・ループ・ヘリックス(HLH)型因子に注目してレトロウイルスやノックアウトマウスの手法により解析を行った。今回は、神経発生研究のよいモデルである網膜を用いた。 HLH型因子HES1は網膜では神経前駆細胞に発現しているが、分化したニューロンには発現していない。HES1を持続発現させるレトロウイルスを神経前駆細胞に感染させると神経分化が抑制された。次に、HES1ノックアウトマウスの網膜をしらべたところ、ニューロンへの分化が正常よりも早く進行しており、層構造が乱れ、眼の形態形成障害がおこった。したがって、HES1は分化速度を一定に抑えることによって眼の形態形成を制御することが明らかとなった。このとき、HES1欠損でHLH型因子Mash1の発現が網膜で増加していた。 次に、Mash1ノックアウトマウスの網膜をしらべたところ、Mash1欠損によって神経分化が遅れていたが、ニューロンの欠損はみられなかった。したがって、Mash1は網膜での神経分化を促進するが、ニューロンの形成に必要不可欠ではないことが示された。このことから、Mash1以外に網膜の神経分化を決定・促進するHLH型因子の存在が予想された。 網膜の神経分化を促進する未知のHLH型因子の探索を試みたところ、ATH‐3と名付けた新たな因子を同定した。ATH‐3は網膜分化の非常に初期から成体に至るまで発現が持続していた。ATH‐3の機能をXenopusをもちいてしらべたところ、外胚葉組織に作用して神経分化を誘導した。誘導された神経組織は、網膜に特異的な遺伝子であるオプシンを発現していた。すなわち、ATH‐3は網膜ニューロンの分化を誘導することが明らかとなった。 以上の結果から、神経分化は多くのHLH型因子によって誘導あるいは抑制されており、これらの因子がバランス良く機能して神経系の形態形成が進められることが示された。
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