研究課題/領域番号 |
08254228
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
松崎 文雄 国立精神神経センター, 神経研究所・遺伝子工学研究部, 室長 (10173824)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1996年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 細胞分裂 / 分化因子 / 転写因子 / プロスペロ / 非対称分配 / 神経発生 / 神経幹細胞 / 細胞極性 |
研究概要 |
prospero遺伝子は、神経系の幹細胞から非対称分裂により生じる2次前駆細胞で、一過的に機能するホメオボックス遺伝子であり、神経発生に必須な役割を果たす。われわれは、prospero蛋白が転写因子であるにも関わらず、この神経幹細胞では細胞質にとどまり、細胞分裂に伴って2次前駆細胞に非対称に分配されることを示してきた。この知見は、転写因子の非対称分配という、細胞分裂にカップルした新しい分化の仕組を示すだけではなく、prospero蛋白が、神経幹細胞の非対称分裂のよいマーカーであることを意味する。そこで、神経幹細胞の非対称分裂を引き起こす細胞極性を解析することを目的に、prosperoとβ-galactosidaseの融合蛋白(pros-βgal)を発生過程の全ての細胞で発現するショウジョウバエ系統を作成し、このマーカー蛋白が、どの細胞で非対称に局在、あるいは分配されるかを検討した。初期胚の外胚葉と内胚葉を構成する上皮細胞では、本来、prosperoを発現しないが、これらの細胞でectopicにpros-βgal発現させると、分裂時には必ず、細胞のcortexに局在することを見い出した。さらに詳しく観察すると、細胞のcortexに局在したpros-βgalは、cortexのapical側からは排除され、basal側(あるいは、basal-lateral側)にだけ存在する。この観察から、上皮細胞、および、神経幹細胞でprosperoを局在させる活性は、上皮細胞に一般的なapical-basal極性に基づいていることが示唆された。prosperoの局在活性を指標として見る限り、幹細胞が非対称分裂を行う際の細胞極性は、上皮細胞の極性と共通の性質を持っている。従って、上皮細胞の極性という非常に一般的な細胞極性が、prosperoのような分化因子の非対称分配を介して、遺伝子発現のの非対称な調節に関わる可能性が浮び上がってきた。上皮細胞のapical-basal極性の形成と維持には、一層に並んだ上皮細胞間の相互作用が必要であるとされているが、非対称分裂を行う神経幹細胞や内胚葉幹細胞は、上皮細胞層から、細胞が離脱して形成される。その際、上皮細胞から幹細胞へ、いかにして、この極性が受け継がれるのかを解明することが、今後の課題であろう。
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