研究概要 |
1.本研究の一環として、大腸菌グルタチオンS-トランスフェラーゼ(以下GST)の三次元構造をX線結晶構造解析により明らかにした。この結果、全体的な構造、構造形成やグルタチオン(GSH)の結合に関与すると考えられる残基は他生物種由来のGSTと共通性があることから、同一の起源から進化した酵素であることが示された。 2.α,μ,πおよびσクラスGSTで触媒機構に関与することが明らかにされているTyr残基は、一次,二次構造的には大腸菌GSTにも保存されているが、立体構造的には触媒機構に関与し難い方向を向いており、本申請者が部位特異的変異により示したこのTry残基が活性発現に関与しないという推定が支持された。また、最近昆虫由来GSTの触媒残基の一つとして提唱されているSer残基も大腸菌GSTでは一次構造上保存されてはいるものの、部位特異的変異(Ser→Ala)では活性発現に関係しない結果を得、立体構造的にも支持される結果が得られた。一方、部位特異的変異により、His106の側鎖の重要性が示唆された。X線構造解析の結果を合わせると、His106の側鎖とCys10の主鎖のN原子がGSHのチオール基の近傍に位置し、触媒機構に関与する可能性が考えられる。したがって、GSTファミリーは活性部位の構造から少くとも3つのグループに分類される可能性が示唆された。 πクラスGSTの基質特異性に関与する構造を明らかにするために、部位特異的変異およびキメラ酵素の作製による検討を行った。この結果、ラットGSTP1-1のGly104をIleに置換することにより、1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンに対する活性を高めることができた。この残基はすでに推定した161位残基とともに104位残基が1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンの結合に関与することを示唆している。 4.GSTの機能変換を高速進化法により行う実験系確立のために、大腸菌GST遺伝子をクロラムフェニコール耐性遺伝子と置換する研究を進めた。
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