研究概要 |
虚血性神経細胞死には壊死とアポトーシスの両者が関与し,一般には虚血重度が強いほど壊死が,また虚血侵襲が軽度な場合にはアポトーシスが関与するとされている.本研究では,壊死の代表とされる断頭虚血,アポトーシスが関与するとされる遅発性神経細胞死の両モデルを用いて,神経細胞が死滅する際に細胞内に起こる生化学的変化,特に染色体DNAの分解と細胞骨格蛋白質の崩壊過程を経時的に検討し,両モデルで見られる相違点について明らかにせんとした.断頭虚血では個々の神経細胞での細胞骨格蛋白質の崩壊が染色体DNAの分解に比し,少なくとも6時間以上先行して見られるのに対し,遅発性神経細胞死では両者の変化が個々の神経細胞で,ほぼ並行して見られることが明らかになった.また遅発性神経細胞死の過程で断頭虚血を負荷すると,残存神経細胞において細胞骨格蛋白質の崩壊が直ちに先行して見られることから両モデルでの細胞内の生化学的変化の進行過程が異なる事が示された.本研究から,虚血性神経細胞死において,被る虚血侵襲の重度により死滅する神経細胞内での生化学的変化の進行過程が異なる事が明らかになり,アポトーシスの関与を考える上で重要な知見と考えられた.
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